学習性無力感というものについて知っていますか?
回避不可能な苦痛が長く続くことで、脳に異常が起きてしまう状態を言います。
学習性無力感に陥ると様々な問題が起きます。
- 判断力低下
- フラッシュバック
- トラウマ化
- 不安感
- 感情の感受性低下
学習性無力感はとても恐ろしく、フラッシュバックや精神病などのきっかけとなり長く苦しむ原因にもなるのです。
この記事では、学習性無力感の恐ろしさと対処法について解説をしていきます。
学習性無力感を学ぶことで、心へのダメージをコントロールしやすくなります。
心身に傷を負いやすい状況を避けることができれば、自分の身を守りやすくなります。
ぜひ、参考にしてみてください。
学習性無力感とは
学習性無力感とは、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンによって知られた心理現象です。
学習性無力感は、正常な判断力を奪い現状の苦痛に対して対処ができなくなってしまう状態をいいます。
学習性無力感を発見した実験について、解説をしていきます。
実験の内容は、檻に入れられた動物をグループに分けてショックを与え反応を見るというものです。
以下の2グループに分けます。
- 頭を動かすとショックを停止できるグループ
- 自分の意志ではショックを停止できないグループ
ショックをあまり受けなかった動物は檻が開くと直ちに逃げ出すことができました。
しかし、自分の意志でショックを停止できなかった動物は、折が開いても自力で逃げ出すことすらできずにその場に横たわって気力を失ったままになってしまいました。
”回避不能な苦痛”を受け続けると、どうすることもできないと悟り考えることを放棄してしまいます。その結果、気力を失いただ横たわるということが起きてしまうのです。
これが、学習性無力感が起きる原理です。
学習性無力感に陥ってしまうと、その体験がトラウマ化してしまいます。
トラウマを抱えると、不安感、無気力感を覚えやすくなりフラッシュバックが起こります。
これらの症状に長期間悩まされ、精神病院やトラウマセンターといったところに通い続ける場合もあります。
トラウマを抱えた脳に起きる変化
トラウマを抱えてしまった脳には様々な変化が起きます。
医療スキャナーでトラウマを抱えた人の脳を確認すると、以下のような反応が見られました。
- 偏桃体、恐怖中枢の活性化
- 右脳の活性化(視覚野、大脳辺縁系)
- 左脳の停止(ブローカ野、言語野)
トラウマになる体験をしたときの状況が、脳の中で再現されていると考えられています。
具体的には以下のようなことが起きています。
- 恐怖中枢が活発化することで、緊張状態が起き、血圧が上昇
- 視覚野が活発化し、当時の起きたことが目に浮かぶように想像が起こります。
- 左脳の働きが停止するため、論理的に解決することができずに慌てることしかできなくなってしまいます。
その結果、どうしようもなく感情を爆発させてしまったり、合理的でない行動や攻撃的な発言などにつながってしまいます。
トラウマのフラッシュバックは、投影的同一視や回避型の回避行動、不安型の感情爆発などと非常に似ています。
幼少期、児童期に学習性無力感を感じることにより、愛着障害が生まれるのではないかと思われます。
学習性無力感が起きやすい状況
学習性無力感が起きやすい状況は、人間社会の中にも数多く存在します。
回避をすることが難しい苦痛がある状況であれば、学習性無力感を引き起こす可能性がどこにでもあります。
代表的なものは以下の3つです。
- ブラック企業
- 支配的、威圧的な親
- 支配的、威圧的な恋人/パートナー
詳しい解説を以下で行います。
ブラック企業
ブラック企業は同町圧力や威圧感などを利用して社員に逆らえない空気感を植え付けていきます。
逆らうことができない = どうすることもできない ということを隔週させ、無理な残業など過酷な仕事をこなすように指示します。
このような状況が続くと、仕事はやがて激しい苦痛となり学習性無力感が起きやすい状況が成立してしまうのです。
合理的な思考力を奪われ、転職や辞職をすることができなくなってしまいます。
支配的、威圧的な親
親が支配的かつ威圧的な人であった場合、子供が学習性無力感を起こしてしまうことが多いです。
親は子供にとって自分を守り、生かしてくれる唯一の存在であるため、親に見捨てられてしまうことは死と同等の恐怖を覚えることになります。
親からの威圧、暴力などは子供にとってまさしくどうすることもできない、受けるしかない苦痛です。
学習性無力感がトラウマにつながり、愛着障害を引き起こす原因となります。
支配的、威圧的な恋人/パートナー
恋人からの支配や、DVに悩む人は現代ではとても多いです。
これも学習性無力感によって合理的な判断が難しくなり、支配から逃げられなくなっているといえます。
また、支配的なパートナーを選んでしまう人は、支配的な親に育てられ愛着障害を抱えてしまった人であることが多いという問題もあります。
愛着システムによる帰属意識が働き、さらに逃れることが難しくなるのです。
学習性無力感を引き起こさないために
学習性無力感を引き起こさないためには、脳に異常が起き始める前に対処をする必要があります。
学習性無力感に陥った後では、正常な判断力や気力が失われているので考え方が偏ってしまいがちです。
具体的には、以下のようなことしか考えられなくなり、行動がしにくくなります。
- 逃げ出すことは良くない、悪いこと
- 逃げ出してもうまくいかない、今が一番いい状態だ
- 今の負担が大きすぎて、逃げ出すことを考える余裕がない
後にトラウマや精神病などの二次災害から自分を守るためにも、脳の活動が正常であるうちに対処をすることが最も望ましいです。
学習性無力感チェックリスト
学習性無力感の特徴をチェックリストとしてまとめました。
リストがすべて当てはまるようであれば、学習性無力感の条件を満たしています。
すぐに対処することをお勧めします。
- 現状に苦痛を感じている
- 苦痛から逃げない選択をすることができないと感じている
- 苦痛を感じないために、感情や感覚を消している
- 逃げる選択をすることができない理由に縛られていると感じている
学習性無力感に陥ってしまったらどうすればよいか
学習性無力感から抜け出すためには、脳の機能を取り戻す必要があります。
脳の機能を正常に戻すことができれば気力や判断力がもどり、正常に対処することができるようになります。
脳の機能を取り戻すためには、まず感情を取り戻していくことが重要です。
- 休みたいと感じたら休む
- 怒りを感じていたら怒りを表現する(怒鳴る、暴れる、怒りを伝える)
- 悲しみを感じていたら悲しみを表現する(泣く、愚痴を言う、不満を伝える)
- 紙に感情をひたすら書きなぐる(手書き、メモ帳など、最後に破るのも効果的)
限界や緊急性を感じていたら病院に行くことも重要です。
本当に限界を迎える前に、対処するように心がけてください。
まとめ
この記事では、学習性無力感の恐ろしさと対処法について以下の項目にて解説しました。
- 学習性無力感とは
- トラウマを抱えた脳に起きる変化
- 学習性無力感が当てはまりやすい状況
- 学習性無力感チェックリスト
- 学習性無力感に陥ってしまったらどうすればよいか
学習性無力感とは、回避不可能な苦痛を受け続けることによって脳に異常が起きる現象です。
脳の活動が鈍くなり、判断力、気力などが失われ現状から抜け出すことが難しくなってしまいます。
学習性無力感に陥らないためには、回避不可能な苦痛を受けていることに素早く気づき早めに対処を行うことが重要です。
皆様が楽に生きることのお役に立てれば幸いです。
この記事は、こちらの書籍から引用した情報をもとに作成しています。
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